魚は熟成させるべき、寝かせた方が美味しいと言われています。実はこれ一般家庭でも出来るんです。今回は自分で釣った魚をもとに実際にやっている工程を踏まえながら魚の熟成方法をご紹介していきたいと思います。
また、どうして美味しくなるのかなど生化学的なお話も少し交えてご紹介します。
■ATPって知っていますか?
●アデノシン三リン酸 生体エネルギー
熟成の前に少しだけ知っておいて欲しいことがあります。
ATPってご存知でしょうか?
アデノシン三リン酸と言います。
参照:ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/アデノシン三リン酸
これは全ての生物のエネルギーに使われるもので、例えば人が運動する時もこのATPが使われています。
もちろん魚類も同じです。
■どうして寝かせると美味しいのか?
●イノシン酸が増えるから
熟成させると魚はどうして美味しいのでしょうか?本題に入ります。
魚は死後、時間が経過するとともにATPの分解産物としてイノシン酸が蓄積していきます。
参照:ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/イノシン酸
イノシン酸は魚肉の有力な旨味成分で、これの増加とともに美味しいと感じる度合いが高まります。
ただ、イノシン酸が更に分解されてしまうとヒポキサンチンに変わってしまいます。
これはいわゆる腐敗を意味します。
ですので適切な処理のもと魚を寝かし、イノシン酸が増えた良いタイミングで食べることが重要となるのです。
*よく、釣った魚は体力を回復させないといけない、と言う理由がお分かりでしょうか?、体力つまりATPの合成、回復を待つことでイノシン酸の元が増えるわけです。
■熟成させる前に適切な下処理を
●鱗取り、エラ、内臓出し→三枚おろし
鱗取り、エラ出し、内臓出しと、熟成させる前にしっかりと下処理をします。
当たり前かもしれませんがこれがとっても大切です。
ちょっとしたアドバイスですが、内臓を取り出した後に流水で残ったハラワタを洗い流しますが、出来るだけ手早く済ませましょう。
海水魚の場合、筋肉の切断面と真水を接触させると、細胞膜を介した浸透圧の関係で、身が水っぽくなってしまいます。
下処理が終わったら三枚おろしにします。
■サクをキッチンペーパーで包む (〜2日まで)
●トレーに置いてラップを掛ける
熟成の工程としてはここからです。三枚におろした身はサクにします。
サクをキッチンペーパーで包みます。(ドリップが出るのでそれを吸水するためです)
トレイにキッチンペーパーで包んだサクを置いてトレイごとラップします。
*キッチンペーパーは1日に1回は換えましょう。
■トレイにキッチンペーパーを敷く
●サクを置いてトレイごとラップをする
熟成の3日目頃からドリップの量も少なくなります。
よってトレイの上にキッチンペーパーを敷いてその上にサクを置きます。(包まなくてもOK)
トレイごとラップをします。
この状態で冷蔵庫に入れて寝かせます。
*相変わらずキッチンペーパーは1日に1回は換えましょう。
■どれくらい熟成させますか?
●ビンチョウマグロの場合 10日熟成
熟成の期間についてですが、これは自分の食した魚でレポートを書いていきます。
まずビンチョウマグロの大トロについて。先に述べた方法で10日間熟成をさせました。
旨味、脂味申し分ない美味しさでした。
●エビスダイの場合 10日間
エビスダイの場合も最長で10日間熟成させました。
ヒラメの様な旨味が広がってこちらも最高に美味しい一品でした。
●鰤の場合 一週間後トリミングしながら
鰤の場合も同じ方法で1週間くらい熟成させています。特にトロの部分は熟成させたほうが断然美味しいです。ただ、熟成中に表面が酸化で変色するのでお刺身やブリしゃぶにするときはトリミングをしてからお刺身にします。
トリミングした表面の身はもったいないのでアラ煮などに投入しています。
実のところ大きな魚だとその日だけでは食べられないので少しずつ食べながら時間の経過とともに、味や旨味の変化を楽しんでいます。
■食中毒の危険性について
●ご判断は自己責任で
食中毒の危険性についてですが、生ものですので衛生面や管理状態で大いにあり得ます。
衛生面での取り扱いに細心の注意を払って頂くとともに、食に関する安全性はご自身でご判断ください。
今回ご紹介した方法はあくまで参考とし、食の安全を保証するものではありませんのでご了承ください。