飼育員の採集出張活動をご紹介|パックロッドでも少しキャスティングしてきました

飼育員として、出張に行ってきました。飼育員の仕事はめちゃくちゃ多いのですが、今回は生物を採集するという任務を遂行してきました。釣りとは少し離れますが、釣り付きの方は興味が湧くと思いますので簡単にご紹介しますね。

■水族館の生物はどこから?

●採集、自家繁殖、交換、購入

水族館の生物はどこから来るのかご存知ですか?大きく分けると4つあります。

 

1つ目は採集です。これは予想がつくかと思いますが自ら飼育員が自然界に採りにいきます。

 

2つ目は自家繁殖。これは水槽の中で増えることです。自然繁殖であったり、人工繁殖であったりと色々ありますが、水族館の中で生まれるということです。

 

3つ目は交換。余剰がある水族館や動物園同士で交換をします。お付き合いってやつですね。

 

4つ目は購入。これは業者さんから購入します。

 

っとまぁ色々あるんですが、元をたどると自然界から頂いているんですよね。

 

これを飼育員は忘れてはいけません。

■この生物をやってみてくれ

●0から探し始めた5年前〜日本初繁殖に成功した

水族館は色んなコンセプトの元、展示するという形でお客様に表現をしています。(色々な表現が各水族館でなされていて楽しいですよ)

 

5年前、僕の所属する水族館でも新しい表現をしようということで新しいブースを立ち上げることになりました。その時に立ち上げメンバーとして私も任命されたのですが、

 

「〇〇という生物を飼育、展示してみてくれ」

 

というのが僕の大きな課題でした。名前は知ってはいましたが、見たことも無いしどこにいるのかもわからない。

 

どうしたらいいねん笑

飼育員として最初の大きな壁でした。

 

そこでリサーチするとその生物は全国に居るらしいが、どうやら大阪湾や瀬戸内などの比較的穏やかな海に居ることがわかりました。

 

そこで、各大学などの研究機関に問い合わせたところ、1つの研究所が心当たりと採集活動のフォローをしてくれるということだったのでそちらへお邪魔したのです。

 

結果、採集に成功し、無事に新水槽で展示をすることに成功しました。(水槽の調整や餌の管理、照明などなど書ききれないほど細かい悩みどころがありました)

 

展示の成功はスタートに過ぎず、飼育管理していくことが実は最大の意義があります。

 

そんな中、4年に渡り観察を続けたところ、産卵期を明確に特定することに成功。

 

そして日本で初めて繁殖に成功したのです。

 

これは僕の中で大きな自信にもなりましたし、この生物に関してならどこの飼育員よりも詳しいと思っています笑

■展示を続けること

●採集活動を続けること

前置きが長くなりましたが、1つの生物を展示続けるということは、定期的に採集活動をすることが必須です。

 

生き物には寿命がありますので、天命を全うした個体に敬意を表して、また自然界から導入します。

 

フィールドに定期的に出ればその生物の自然界の様子を観察することもできます。

 

ということで、採集活動の様子をご紹介します。

 

生物の輸送には活魚トラックを使うイメージがあるかもしれませんが、呼吸量の少ない小型の魚や無脊椎動ならばパッキングという方法で郵送することが出来ます。

 

今回は現地採集→パッキング→郵送→開封、水槽へ

 

この流れでコトを進めます。

 

採集にはこんな感じで

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胴長を着用し、夜の海へ入っていきます。(夜行性なんです。。)

 

タモを駆使して規定個体数を確保。

 

あとは自生する個体の観察をします。

相変わらずの群生数でホッとしました。

■パッキング→輸送→開封

●無事水槽へ

翌日施設を利用させていただき、パッキングをします。

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丁寧に梱包して郵送。

 

翌日到着後直ぐに状態を確認。

 

水槽へ。

 

これが一連の仕事です。

 

1つの生物にこれだけの労力を使うというのはおそらく飼育員だけでしょう。そしてそれが僕らの仕事だとも思っています。

 

同時に、実はここまでやれるのは個人的な特性もあると思っています。というのも、1つの生物を追って釣りするのとめちゃくちゃ感覚が似ているんです。

 

というわけで、仕事でも釣りでも生物のことを考えている私がお送りしています。ということです笑

 

ちなみに、

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パックロッドを少し降ってきましたが、とーっても渋かったです。

 

地元のおじさんと楽しいお話が出来たので良しとします。