ヒイカ(ジンドウイカ)は水槽投入後、約3日で慣れ始めて餌を食べ出しました。頭足類の飼育は餌を食べられることができるのか否か。これがほとんどと言っても過言ではありません。ではどうしてジンドウイカは一気に死亡したのか。これに迫ってみましょう。
■餌を食べると同時にペアリング
●ジンドウイカは閉鎖水域の中で盛んに交接を繰り返した
ジンドウイカはもともと群れて生活しているのは釣り人の皆さんもご存知かと思います。群れが来ると連発して釣れるのがその証ですよね。群れの中には必ず雌雄が居ます。この雌雄で居ることが産卵期にはとても重要で、餌も食べて、交接もすることが確認できました。
交接に関してはとても乱暴なイメージで、オスがメスの外套膜に抱きついてそのままスルスルと腕の部分まで下がっていき抱き合うという交接行動が確認できました。
ペアリングに関しても流石群れを成して生活するイカだという印象で、例えばアオリイカなどは1ペアの存在意義が強いのですが、ジンドウイカは他のオスに対して攻撃はするのですが、群れで居るので、結局ペアが確立するということは成り立たず、色んな雌雄が交わるような感じでした。遺伝子的に見ると、色んな遺伝子が交わった方が多くの遺伝子を持つイカが増えるので良い事だと感じます。(これを遺伝的多様性と言います)
また余談ですが、イカは性転換はすることはまずありません。よく魚ではメスがオスになるとかがありますがイカでは性転換は無いものとされています。
■卵は房状の卵塊
●粘着性があり、砂中に産み付け、転がる
交接を終えたメスのジンドウイカは砂の中に卵を産み始めました。アオリイカやコウイカは立体構造物に産み付けますが、ケンサキイカなどは砂の中に産みます。ジンドウイカに関しては産卵例の報告が極めて少なかったので、どうなのか?と見ていたのですがどうやら砂中に産むタイプのようです。
一見何があるかわからないように見えますがこちらがジンドウイカの卵です。
一房6センチほどで、その中に約80粒の卵が入っていました。
■受精率が高かった
●そして発生が進み出した
産卵を終えたジンドウイカは身体が傷だらけになり、後に死亡していきました。産卵を終えたということで死亡するのは自然の摂理だと思いました。
ところでその後産卵された卵はどうなるのか?彼らにとっても受精していることが生きた証となります。
正直なところ、この手のイカの卵はとても難しくて受精しても上手く発生させられないのが現実にはあります。その背景を踏まえて、これを確認した時には驚きました。
お分かりでしょうか?赤い点がイカの目です。発生が高確率で進んでいたのです。
外套膜が形成されてイカの形になってきています。
この後、果たして上手く大きく育てることができるのか?それは僕にもやってみないと分かりません。いかんせんサイズが小さいので初期餌料も含めてわかっていませんので。
ただ、釣るだけではなくて飼育してみることでこれだけの知られていないことがわかるのです。
それをどんどん解明していくこと。それを出来るだけ釣り人の皆さんに伝えること。それは僕にしかできないことだと勝手ではありますが自負している次第です。